インストリーム広告(いんすとりーむこうこく)In-Stream Video Ads

インストリーム広告とは、動画コンテンツの再生前・再生中・再生後に差し込まれる形式の動画広告のことです。YouTubeで動画を再生しようとしたときに最初に流れる広告が、最も身近な例です。差し込まれる位置によって、本編前を「プレロール」、本編の途中を「ミッドロール」、本編の後を「ポストロール」と呼び分けます。また、数秒後にスキップできる「スキップ可能型」と、最後まで見なければ本編に進めない「スキップ不可型」があり、それぞれ求められる作り方が変わります。共通しているのは、視聴者は広告を見に来たのではなく、本編を見に来ているという点です。この前提を理解しているかどうかで、成果は大きく変わります。

なぜインストリーム広告が重要か

テキストやバナーの広告と違い、インストリーム広告は「見ようとしている人の視界を、一時的に占有できる」という特性を持ちます。スクロールで流し見される表示形式に比べ、音と動きで伝えられる情報量は圧倒的に多く、サービスの雰囲気や人の表情といった、文章では伝わりにくいものを届けられます。認知が足りていない中小企業にとって、限られた予算で「そもそも存在を知ってもらう」ための手段として、選択肢に入りやすい形式です。

一方で、多くの企業が失敗するのは、この形式を「テレビCMの短縮版」として扱ってしまうときです。テレビCMは最後まで流れる前提で作られています。しかしスキップ可能型のインストリーム広告では、視聴者は数秒後に「スキップ」ボタンを押せます。ブランド名やロゴが最後に出てくる構成では、その手前で大半が離れてしまい、何の広告だったのかすら記憶に残りません。さらに、多くの配信形式では一定時間以上見られたときに課金される仕組みが採られており、興味のない人にスキップされること自体は損失になりません。つまり本当の課題は「スキップされないこと」ではなく、スキップされる前提で、最初の数秒に何を置くかです。ここを設計し直すだけで、同じ予算でも結果が変わります。

AUTOSELLの視点

A. 顧客心理の視点
インストリーム広告に接する人の心理は、他の広告面とは決定的に違います。目的の動画を見ようとしているところに割り込まれているため、初期状態はわずかな苛立ちから始まります。この状態で売り込みを始めると、心は閉じます。逆に、冒頭で「自分に関係がある」と感じられれば、その苛立ちは一瞬で興味に変わります。効くのは、商品説明ではなく相手がいま抱えている状況の言語化です。「見積もりの作成に毎回半日かかっていませんか」のように、相手の日常にある具体的な場面から入ると、視聴者は「これは自分の話だ」と判断して手を止めます。もうひとつ大切なのは、スキップした人を失敗と見なさないことです。スキップは「今の自分には関係ない」という意思表示であり、対象外の人が自ら降りてくれた合図でもあります。全員に見せようとするほど、メッセージは誰にも刺さらなくなります。

B. 仕組み化の視点
インストリーム広告は単発の出稿で終わらせると、費用が流れていくだけの支出になります。仕組みとして設計するなら、役割の違う動画を組み合わせ、視聴の反応に応じて次を出す構造にします。具体的には、まず短い認知向けの動画を広く配信し、それを一定以上見た人だけを対象に、次はサービスの中身を伝える動画を配信する。さらにその動画を見た人には、事例や資料への誘導を出す。この段階構成にすると、1本の動画で全部を伝えようとする必要がなくなり、それぞれの動画が短く鋭くなります。動画の中で語る内容と、着地させるページ、その後の追いかけまでをひと続きで考えることが要点です。動画ファネルの考え方をそのまま広告配信に適用する形といえます。加えて、同じ人に何度も同じ広告を当て続けると、印象は好意から嫌悪に反転します。フリークエンシーキャップを設定し、接触回数の上限を決めておくことも仕組みの一部です。

C. AI・自動化との接点
配信面の側では、誰にいつ配信するかの判断はすでに機械学習が担っています。広告主が手動で細かく調整するよりも、目標とする成果を正しく設定し、そこに向けて自動最適化させるほうが結果が出やすい領域です。人間の側に残る仕事は、何を目標に据えるかの定義と、動画そのものの中身です。ここでAIを使うなら、まず冒頭数秒のパターンを複数案つくる用途が現実的です。同じ内容を「質問から入る」「数字から入る」「困っている場面の再現から入る」といった切り口で生成させ、実際に配信して離脱の起き方を比べます。視聴の離脱位置のデータをAIに読ませ、どの秒数で人が抜けているかを言語化させるのも有効です。さらに、広告経由で流入した人の行動をARGASのような追跡システムやMAツールと連動させれば、「広告を見て、その後サイトの料金ページを見た人」を自動で抽出し、次の接触へつなぐところまで自動で回せます。

図解:スキップされる前提で、最初の数秒に何を置くか

視聴者は広告ではなく本編を見に来ている。勝負は最初の数秒で決まる ① 差し込む位置(本編動画の再生の流れ) 視聴者が見たい本編コンテンツ プレロール 本編前 ミッドロール 本編の途中 ポストロール 本編後 ② 広告が流れ始めてからの数秒間 最初の数秒 ここまで残った人にだけ、詳しい話が届く ここで「見続ける/スキップ」が判断される 会社紹介から入る 「私たちは〇〇株式会社です」 自分に関係ない話だと判断される 相手の状況から入る 「その作業、毎回半日かかっていませんか」 自分の話だと感じて手が止まる 離脱 視聴継続 → 次の接触へつながる スキップは失敗ではなく、対象外の人が自分で降りた合図。全員に見せようとするほど、誰にも届かなくなる。

事例

国内事例:たとえば、業務用の機器を扱う中小メーカーが、認知拡大のためにインストリーム広告を出稿しているとします。使ったのは、展示会用に作った3分の会社紹介動画を60秒に縮めたもの。冒頭は社名とロゴ、続いて沿革、最後に製品——という構成でした。配信してみると再生開始の数は伸びるのに、問い合わせにはほとんどつながりません。視聴データを見ると、大半が冒頭の数秒で離れていました。そこで構成を組み替えます。冒頭を「この作業、いまも手作業でやっていませんか」という現場の映像に変え、続く数秒で機器が動いている場面を見せ、詳細は着地先のページに任せる。さらに、その広告を一定以上見た人にだけ、導入企業の使い方を伝える2本目を配信する設計にしました。このように、伝える順番と配信の段階を変えるだけで、同じ素材でも次に進む人の数は変わります。動画を撮り直すより先に、順番を疑うことが有効な場面は少なくありません。

海外事例:海外の動画広告の実務では、スキップ可能な広告について「冒頭でブランドと便益を提示する」という考え方が広く共有されています。テレビCMのように結論を最後に置く構成ではなく、伝えたいことを最初に置き、残りの時間で補強するという順序です。また、1本の動画で完結させるのではなく、認知を担う短い動画と、検討段階に向けた長めの動画を役割分担させ、前者を見た人に後者を配信していく段階的な設計も、標準的な手法として定着しています。音声なしで再生される環境を想定し、字幕や画面上の文字で内容が伝わるようにしておくことも、実務上の基本として扱われています。

現場での使い方

  1. 目的を認知か獲得かに決める:認知なら見られた人数と記憶への残り方、獲得ならサイトでの行動を見る。両方を1本の動画で追うと、構成が中途半端になる。
  2. 冒頭の数秒を単独で設計する:ここだけを切り出して「誰に向けた、何の話か」が伝わるか確認する。社名やロゴから始めない。
  3. 音なしで成立するか確認する:無音で再生される環境を前提に、字幕や画面上の文字だけで意味が通るかを見る。
  4. 着地先とセットで用意する:広告で語った内容と遷移先ページの見出しがつながっているかを確認する。ずれていればそこで離脱する。
  5. 段階配信を組む:1本目を一定以上見た人に2本目を配信する構造にする。全員に同じ動画を出し続けない。
  6. 接触回数の上限を決める:同じ人への露出が重なると好意が反転する。上限を設定し、成果と併せて定期的に見直す。

関連用語

まとめ

インストリーム広告は、本編を見に来た人の流れに差し込む形式です。だからこそ、視聴者が広告を待っていない前提に立つ必要があります。要点は3つあります。ひとつは、最初の数秒を単独で設計すること。会社の紹介ではなく、相手がいま置かれている状況から入ると、苛立ちは興味に変わります。ふたつめは、スキップを失敗と考えないこと。関係のない人が自分から降りてくれることで、残った人にだけ予算が向かいます。みっつめは、1本で完結させず段階で組むこと。認知の動画を見た人に次を届ける構造にすれば、動画は短く鋭くなり、費用は無駄になりません。配信の最適化は機械に任せ、人は目標の定義と動画の中身に集中する。この分担ができたとき、動画広告は出稿するたびに消える費用ではなく、顧客が自然に次へ進む仕組みの入口になります。

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