NAP情報
NAP Informationなっぷ・じょうほう
NAP情報とは、事業者の名称(Name)・住所(Address)・電話番号(Phone)の3点をまとめた呼び方です。頭文字を取ってNAPと呼びます。この3点がネット上のどの掲載先でも同じ形で書かれているかどうかが、地図検索で「同じ1件の事業者」として扱われるかを左右します。地味な作業に見えますが、これがそろっていないと、その先の施策がほとんど効きません。
同じ会社なのに、ネット上では書き方が3通りある
自社名をそのまま検索してみてください。Googleビジネスプロフィール、自社サイトのフッター、業種別のポータルサイト、SNSのプロフィール欄、過去に登録した無料の掲載サービス。おそらく5つ以上の場所に会社の情報が出てきます。そして多くの場合、その書き方は場所ごとに少しずつ違っています。「株式会社」が前にあったり後ろにあったり、「(株)」と略されていたり。住所が「1-2-3」だったり「1丁目2番3号」だったり、ビル名と階数が抜けていたり。電話番号が代表番号だったり、広告用の転送番号だったり。
人間が見れば同じ会社だと分かります。しかし地図検索の側は、複数の掲載先に散らばった情報を突き合わせながら「これは同一の事業者だ」と判断しています。表記が割れていると、その判断の確からしさが下がります。Googleはローカル検索結果の順位が主に関連性・距離・視認性の高さで決まると説明したうえで、情報を完全かつ正確な状態に保つことを推奨事項として挙げています。NAPをそろえる作業は、この「正確に保つ」の最も基礎的な部分にあたります。
表記ゆれが生まれる原因はほとんど決まっています。ひとつは時間差です。移転した、電話番号を変えた、社名を変えた。そのときに自社サイトは直しても、5年前に登録したポータルサイトまでは手が回りません。管理画面のIDとパスワードが分からなくなっているケースも珍しくありません。もうひとつは担当の分散です。サイトは制作会社、地図は店長、SNSは若手社員、名刺は総務。それぞれが良かれと思って書いた結果、少しずつ違う表記が並びます。3つめが広告用の番号です。効果測定のために掲載先ごとに違う転送番号を使うと、計測はできても、同じ事業者だという手がかりは弱くなります。
実害は静かに出ます。旧住所を見た顧客が別の場所に行く。使われていない番号にかけて、つながらないまま次の会社に移る。地図に自社が2件表示され(重複した登録)、どちらのクチコミも育たない。いずれも「問い合わせが来なかった」としか記録に残りません。何が起きたのかが分からないまま、原因が広告やサイトのデザインに求められてしまう。だからこそ最初に確認する価値があります。加えて、自社サイト側では会社概要ページやフッターにNAPを明示し、ローカル構造化データとして機械が読める形でも記述しておくと、情報の受け渡しがより確実になります。
顧客は正しさを確かめに来ているのではなく、間違っていないことを確かめに来ています。
顧客心理の視点で見ると、NAPは信頼を積み上げる材料ではなく、不安を発生させないための土台です。住所や電話番号が正しく書かれていても、顧客が「この会社は丁寧だ」と感心することはありません。ところが食い違っていると、はっきり気づきます。電話番号が2つ出てきた瞬間、多くの人はどちらにかけるかを考えるのをやめて、別の会社を見に行きます。地図で「ここは移転しました」という書き込みを見つけたら、営業しているかどうかを確かめるところから始めなければならない。行動する直前の顧客にとって、確認作業がひとつ増えることは、それだけで離脱の理由になります。とくに初めて依頼する相手を探しているときや、金額の大きい工事や契約を検討しているときは、情報が食い違っていること自体が「この会社は大丈夫だろうか」という判断材料になってしまいます。良く見せるための項目ではなく、外れないための項目だと位置づけてください。
仕組み化の視点では、3つを型にします。①正とする1件を決める——名称・住所・電話番号の公式な書き方を1枚のドキュメントに固定します。登記上の表記、郵便物が届く住所の書き方、全角と半角のどちらを使うか、ビル名と階数を入れるか、市外局番はハイフンで区切るか。ここで迷いが残ると、以降ずっとゆれ続けます。②掲載先の台帳をつくる——掲載先の名前、URL、ログイン情報の管理場所、担当者、最終確認日を1行ずつ書き出します。これがないと、変更が起きたときに「どこを直せばいいか」を毎回探すことになります。台帳は完璧である必要はなく、思い出せる範囲から始めて、見つけるたびに追記していけば十分です。③変更イベントに更新をひもづける——移転、電話番号の変更、社名変更、営業時間の恒久的な変更。この4つが起きたら台帳を上から順に処理する、と決めておきます。思い出したときにやる運用は、必ず途中で止まります。年に1回、決算期などのタイミングで全件を見直す日を設けておけば、取りこぼしも回収できます。
AI活用の視点では、棚卸しと校正の部分を任せられます。各掲載先から名称・住所・電話番号をコピーして一覧にし、正とする表記とあわせてAIに渡せば、どこがどう違うかの差分を一覧で出させることができます。目視で見比べると全角と半角の違いや「丁目」表記の揺れは見落としますが、この作業は機械のほうが確実です。表記ルールを文章にしてAIに渡し、新しく作った会社概要ページやSNSのプロフィール文をルールどおりか校正させるのも有効です。ARGASのような追跡の仕組みがあれば、どの掲載先から来た人が問い合わせまで進んでいるかも見えるため、手を入れる優先順位を決めやすくなります。ただし住所と電話番号の最終確認は、必ず人が公式な書類と突き合わせてください。AIは形式の不一致を見つけるのは得意ですが、どちらが正しいかは判断できません。ここを取り違えると、間違ったほうの表記で全掲載先をそろえてしまいます。
図解:表記が割れている状態と、そろえた状態
左は掲載先ごとに書き方が違う状態。人が見れば同じ会社ですが、機械の側では1件に結びつきにくくなります。右はマスターを1つ決めて全掲載先をそろえた状態です。
事例で見る:国内・海外
Googleが示す考え方 ── 「実際に使われている名称」で書く
Googleはビジネスプロフィールのガイドラインで、実店舗の看板や公式サイトで実際に使われている名称を登録することを求めています。検索されたい言葉を名称に足す行為——「○○工務店」を「○○工務店|○○市の外壁塗装・屋根修理」と登録するようなやり方は、ポリシー違反にあたり修正や削除の対象になります。住所についても、郵便物が届く正確な形で記載し、実際に顧客と対面する拠点であることが前提とされています。電話番号は、その拠点につながる番号であることが求められます。ここから読み取れる実務上の指針は明快です。NAPは検索対策の欄ではなく、事実を書く欄だということ。工夫の余地があるのは名称ではなく、カテゴリやサービス項目、写真といった他の欄のほうです。また、同じ拠点が複数登録されている状態(重複した登録)は望ましくないとされており、見つけた場合は統合の申請ができます。Googleビジネスプロフィールの仕様やガイドラインは更新されるため、作業に入る前に公式ヘルプの最新版を確認してください。
移転した設備工事会社のような形 ── 直したつもりで残っている
たとえば、事務所を隣町に移転した設備工事の会社を考えます。移転にあたって、自社サイトの会社概要と名刺は新しい住所に直しました。Googleビジネスプロフィールも変更しました。ところが半年後、新規の問い合わせが以前より減っていることに気づきます。調べてみると、数年前に登録した業種別のポータルサイトや無料の企業情報サイトに、旧住所と旧電話番号がそのまま残っていた——というのは、移転を経験した会社でよく起きる形です。しかもそうしたサイトは自社名で検索したときに上位に出ることがあり、顧客はそちらを見て電話をかけます。つながらなければ、そこで終わりです。この問題の厄介なところは、失注として記録に残らない点にあります。対策は特別なものではありません。移転の計画が決まった時点で、自社名を検索して出てくる掲載先をすべて書き出し、台帳にしておく。そして移転の作業項目に「台帳の全件更新」を1行入れておく。ログイン情報が分からない掲載先については、問い合わせフォームから修正を依頼します。これは特定企業の実績ではなく、拠点や連絡先が変わる事業で見落とされやすい点をまとめた代表的な進め方として示しています。
現場での使い方:5ステップ
- 正とする表記を1枚に固定する名称・住所・電話番号の公式な書き方を決める。全角か半角か、ビル名と階数を入れるか、番地はハイフンか丁目表記か。ここで迷いを残さない。
- 自社名で検索し、掲載先の台帳をつくる掲載先名・URL・ログイン情報の管理場所・担当者・最終確認日を1行ずつ。完璧を目指さず、見つけるたびに追記する形で始める。
- 影響の大きい順に直すGoogleビジネスプロフィール、自社サイトのフッターと会社概要、主要な業種ポータル、SNS、紙媒体の順。すべてを同時に直そうとすると止まる。
- 電話番号の方針を決める広告用の転送番号を使うなら、どの掲載先で使うかを限定する。すべての掲載先で番号を変えるのは避ける。
- 変更イベントと年1回の棚卸しをひもづける移転・番号変更・社名変更・営業時間の恒久変更が起きたら台帳を上から処理。加えて年1回、全件を見直す日を決めておく。
関連用語
まとめ:土台がそろってから、施策が効きはじめる
NAP情報は、名称・住所・電話番号の3点です。この3点がネット上のどこでも同じ形で書かれているかどうかが、地図検索で1件の事業者として認識されるかを左右します。顧客の側から見れば、これは信頼を稼ぐ項目ではなく、不安を発生させないための土台です。食い違いがひとつあるだけで、行動する直前の人は別の会社を見に行きます。進め方は決まっています。正とする表記を1枚に固定し、掲載先の台帳をつくり、影響の大きい順に直し、変更イベントに更新作業をひもづける。差分の洗い出しや表記ルールの校正はAIに任せられますが、どちらが正しいかの最終確認は人が公式書類と突き合わせてください。土台がそろってはじめて、クチコミも写真もページも、積み上げた分だけ効くようになります。

