情報アーキテクチャ
Information Architectureじょうほう・あーきてくちゃ
情報アーキテクチャとは、サイトの中にある情報をどう分類し、どんな名前をつけ、どの順路でたどれるようにするかを設計すること。見た目を整える作業の前段にあたり、顧客が探しているものに迷わず到達できるかどうかは、ほとんどここで決まります。
デザインを変えても直らない問題がある
サイトが分かりにくいと感じたとき、多くの企業はまず見た目に手を入れます。配色を変え、写真を差し替え、余白を広げる。ところがそれで解決するのは、印象の問題だけです。探しているものが見つからないという問題は、見た目をいくら整えても直りません。原因は表面ではなく、情報の分け方と名前のつけ方にあるからです。分類が顧客の探し方と合っていなければ、どれだけ美しいメニューを作っても、顧客はその中に自分の用を見つけられません。作り直したのに成果が変わらないという結果は、たいていこの層を素通りしたときに起きます。
この分野の基礎を築いたローゼンフェルドとモービルらの整理では、情報アーキテクチャは大きく4つの要素で構成されます。組織化(どう分けるか)、ラベリング(何と呼ぶか)、ナビゲーション(どうたどれるようにするか)、検索(どう探させるか)です。この4つのうち、中小企業のサイトで最も問題が起きやすいのは最初の2つです。組織化については、社内の部署や事業部の区分をそのままメニューにしてしまう。顧客は会社の組織を知らないので、どこに自分の用があるか判断できません。ラベリングについては、自社で使っている造語や略語をそのまま項目名にしてしまう。社内では通じても、初めて訪れた人には何のページか分かりません。分け方と呼び方が顧客側の言葉になっていないと、その先の設計はすべて空回りします。
もうひとつ、見落とされやすい前提があります。顧客は必ずしもトップページから入ってこないということです。検索エンジンや広告、SNSの投稿からは、サイトの途中にあるページへ直接着地します。トップページを起点に組み立てられた構造は、この着地の仕方を想定していません。着いたページに現在地の表示も、次に行くべき場所への案内もなければ、顧客はそこで行き止まりになります。だから情報アーキテクチャは「トップから順に降りていく地図」ではなく、どのページに着いても、今どこにいて次にどこへ行けるかが分かる構造として設計する必要があります。この視点があるかどうかで、同じ内容のサイトでも到達率は大きく変わります。
会社の都合で分けるのをやめ、顧客が探すときの言葉と順序で構造を組み直す。
顧客心理の視点で見ると、迷った顧客は探すのをやめるのではなく、探す場所を変えます。つまり検索結果に戻り、別の会社のサイトを開きます。ここで失われているのは順位でも流入でもなく、すでに関心を持っていた見込み客そのものです。しかも顧客は、自分が何を探しているかを最初から明確に言葉にできているわけではありません。「工場の検品作業に時間がかかっている」「採用の応募が集まらない」といった困りごとの状態でサイトに来て、それを解決してくれそうな入口を探しています。この状態の人にとって、製品名や型番で分類されたメニューは手がかりになりません。逆に「作業の効率を上げたい方へ」「人が集まらないとお悩みの方へ」という分け方であれば、自分の状況と結びつけられます。分類とは、顧客が自分の困りごとを自分で見つけるための鏡だと考えると、決め方を誤りません。
仕組み化の視点では、5つの手順で組み立てます。①サイトにある情報をすべて書き出す(棚卸し。この時点で重複と不要が見える) ②顧客が実際に検索している言葉と、問い合わせで使われている言葉を集める ③その言葉に沿って分類し直す(社内の組織図は使わない) ④1つの階層に並ぶ項目を7つ前後までに絞る ⑤どのページに着地しても、現在地と次の行き先が分かる案内を全ページ共通で置く。この⑤を共通部品として実装しておくことが重要です。個別ページごとに案内を付けていると、ページが増えるたびに手が抜け、抜けたページが行き止まりになります。構造は共通の仕組みとして持ち、ページを追加するだけで自動的に組み込まれる形にしておく。加えて、分類の定義を1枚の資料として残しておくと、新しいページをどこに置くかで迷わなくなります。定義がないと、置き場所に困った項目が「その他」に流れ込み、そこが誰も見ない場所になります。
AI活用の視点では、3つの使い方があります。1つ目は分類案の候補出しで、棚卸しした全ページの一覧を渡し、「顧客の目的を軸に分類し直すと、どんな案が考えられるか」を複数出させる。自社では思いつかない切り口が出てきます。2つ目はラベルの点検で、メニュー項目名の一覧を渡し「業界を知らない人が読んで、何のページか分からないものを指摘して」と依頼する。社内では気づけない造語が確実にあぶり出されます。3つ目は検索意図との突き合わせで、実際に検索されている言葉と現在の分類を並べて渡し、対応していない領域を洗い出させる。ARGASのような顧客追跡の仕組みと組み合わせれば、実際にどのページを経由して問い合わせに至っているかが分かるため、想像ではなく実際の経路から構造を検証できます。ただし、最終的にどの分類を採用するかは事業の判断です。AIには候補出しと点検を任せ、決めるのは自社で行うのが適した分担です。
図解:顧客が答えにたどり着くまでの4つの段
下の図は、顧客がサイトに着いてから答えにたどり着くまでの段と、それぞれの段で起きるつまずき、そして情報アーキテクチャで決めることを対応させたものです。どの段で止まっても結果は同じで、顧客は検索結果に戻ります。下段は分け方を決めるときの原則です。
事例で見る:国内・海外
Amazon ── 分類だけに頼らず、複数の道筋で同じ商品に着く
Amazonが膨大な数の商品を扱いながら、利用者が目的の品にたどり着けるようになっていることは広く知られています。構造として特徴的なのは、分類(カテゴリ階層)だけに依存していない点です。カテゴリをたどる道筋のほかに、検索窓、価格やブランドなどの絞り込み、閲覧履歴に基づく提示、購入者のレビューからの回遊といった複数の経路が並行して用意されています。情報アーキテクチャの観点で見ると、これは「一つの正しい分類を作る」のではなく、人によって探し方が違うことを前提に、複数の到達経路を設計している構造です。中小企業がこの規模をそのまま真似ることはできませんが、考え方は移せます。扱う商品やサービスが増えてきたときに、階層を深くして整理しようとすると、たいてい失敗します。深い階層は、正しい道を最初から知っている人にしか使えないからです。それよりも、用途から探す入口、課題から探す入口、業種から探す入口といった別の切り口を横に並べるほうが、たどり着ける人は増えます。なお、この設計による具体的な購入率や売上への影響は公開情報から断定できないため、ここでは扱いません。
型番で分類していた製造業 ── 用途と課題の入口を横に足す
たとえば、産業用の部品や機器を扱う製造業の企業で、サイトの製品情報が型番とシリーズ名で分類されている、という状況を考えます。社内では完全に整理された構造です。既存の取引先も型番で探すため、問題は起きていません。ところが新規の見込み客は、型番を知りません。「うちの工程に合うものがあるか」を確かめに来ているので、シリーズ名の一覧を見ても判断できず、そのまま離れます。ここで行うのは、既存の型番による分類を残したまま、用途と課題を軸にした入口を横に足すことです。具体的には、「加工の精度を上げたい」「省人化したい」「既存設備に後付けしたい」といった状況の言葉で入口を作り、そこから該当する製品群につなぎます。問い合わせメールや営業の商談記録に出てくる言葉をそのまま使うのが確実です。実務上のコツは3つあります。1つは、既存の分類を壊さないこと。既存客の探し方を変えると、そちらで混乱が起きます。2つ目は、新しい入口を作ったら、どの入口から来た人が問い合わせているかを記録すること。使われていない入口は言葉が合っていないので、名前を変えます。3つ目は、階層を深くせず横に広げること。深い階層は、道を知っている人しか通れません。これは特定企業の実績ではなく、専門性の高い商材を扱う企業で取りやすい代表的な進め方です。
現場での使い方:5ステップ
- サイトにある情報を全部書き出す棚卸し。この時点で、重複しているページと、もう使っていないページが見える。分類の前に対象を確定させる。
- 顧客が使っている言葉を集める検索されている語、問い合わせメールの文面、商談での言い回し。社内の呼び方ではなく、外から来る言葉を材料にする。
- 顧客の目的を軸に分類し直す組織図や型番ではなく、用途・課題・状況で分ける。1つの階層は7つ前後まで。深くせず、横に広げる。
- どのページに着地しても迷わない案内を共通化する現在地の表示と次の行き先を全ページ共通の部品として持つ。個別対応にすると、増えたページから抜けていく。
- 実際の利用者に分類させて確かめる項目名を書いた紙を分けてもらう(カードソート)だけでよい。想定と違う分け方が出たら、そちらが正しい。
関連用語
まとめ:分け方と呼び方が決まれば、顧客は自分で進める
情報アーキテクチャは、情報の分け方・呼び方・たどり方を決める設計です。見た目を整えても、探しているものが見つからない問題は直りません。分類は社内の組織や型番ではなく、顧客が困りごとを説明するときの言葉で決める。階層は深くせず、用途や課題といった別の入口を横に並べる。どのページに着地しても現在地と次の行き先が分かるよう、案内は共通の部品として持つ。分類案の候補出しやラベルの点検はAIに任せ、どれを採用するかは自社で決める。そして最後は、実際の利用者に分けてもらって確かめる。構造が顧客の探し方と合っていれば、こちらが売り込まなくても、顧客は自分で答えにたどり着き、次の一歩に進みます。

