マーケティング用語集カテゴリ:Web制作

離脱防止設計

Exit Prevention Designりだつぼうしせっけい

英語表記
Exit Prevention Design
カテゴリ
Web制作
難易度
★★☆(実務者向け)
関連サービス
Webサイト制作

離脱防止設計とは、顧客がページを離れてしまう原因を局面ごとに特定し、離れる前に手を打つための設計。中心にあるのは引き止める仕掛けを足すことではなく、そもそも離れる理由を取り除くことです。

Why it matters

「離脱率が高い」だけでは、何も直せない

アクセス解析を見ると、離脱率という数字がページごとに並んでいます。数字が高いページを見つけると、そこを直そうという話になりますが、この進め方は多くの場合うまくいきません。理由は2つあります。1つは、離脱率が高いこと自体は必ずしも問題ではないからです。問い合わせ完了ページや、資料をダウンロードし終えたページは、役目を果たしたうえで離れています。ここを下げようとするのは、目的を取り違えた作業です。もう1つは、離脱率は結果しか示さず、原因の場所を示さないからです。同じ「離れた」でも、開いて2秒で戻った人と、最後まで読んで納得したうえで別の会社と比べに行った人では、打つべき手がまったく違います。数字を眺めているかぎり、この2つは区別できません。

そこで離脱防止設計では、離脱を率ではなく局面で捉えます。顧客が離れるタイミングは、大きく4つに分かれます。着地した直後の数秒、読み進めている途中、比較検討をしている最中、そして入力の途中です。それぞれで顧客の状態はまったく違います。着地直後に離れる人は、まだ内容を読んでいません。ページの表示が遅いか、探していた話と見出しが噛み合っていないかのどちらかです。読み進める途中で離れる人は、読み始めてはいるが「これは自分向けの話ではない」と判断しています。比較検討中に離れる人は、関心はあるのに判断材料が足りずに決めきれていない。入力途中で離れる人にいたっては、すでに問い合わせようと決めた人です。いちばん惜しい離脱ほど、いちばん直しやすい場所で起きています

にもかかわらず、離脱対策として最初に検討されるのはポップアップであることが多い。離れようとした瞬間に画面を覆って割引や資料を提示する、という方法です。これが機能する場面はありますが、離れる理由が残ったままだと、印象を悪くするだけで終わります。表示が遅くて離れようとしている人に、さらに読み込みの重い画面をかぶせても引き止められません。判断材料が足りずに迷っている人に「今だけ」と急かせば、警戒はむしろ強まります。順序としては、まず離れる理由を消す。そのうえで、それでも離れる人に対して補助的に使う。引き止める工夫は、原因を取り除いたあとの最後の一手であって、最初の一手ではありません。

Our perspective

引き止める仕掛けを足す前に、離れる理由をひとつずつ消す。

顧客心理の視点で見ると、離脱はほとんどの場合拒否ではなく保留です。顧客は「この会社は違う」と結論を出して去っているのではなく、「今ここでは判断できない」と感じて、判断しやすい場所へ移動しています。移動先は競合のサイトであることも、検索結果であることも、単に「あとで考える」という先送りであることもあります。ここで大事なのは、顧客は離れる理由を言葉にしないまま離れるということです。「料金が分からないので他を見ます」とは書き残してくれません。だから原因は、こちらが局面ごとに推測して確かめにいくしかない。そして局面が分かれば、必要なものはかなり具体的になります。着地直後なら、探していた話がここにあるという確認。読んでいる途中なら、自分と同じ状況の会社の話。比較しているなら、料金と対応範囲。入力中なら、この手続きがすぐ終わるという見通しです。それぞれの局面で顧客が欲しがっているのは、売り込みではなく安心して先へ進むための材料です。材料がそろえば、引き止めなくても人は残ります。

仕組み化の視点では、離脱防止は思いつきの改善を重ねる作業ではなく、測る→特定する→1か所直す→また測るという循環にします。手順は5つです。①改善したいページを1つに絞る(全ページを対象にすると何も進まない) ②そのページに、どこまで読まれたかが分かる計測点を置く(画面の4分の1・半分・最後まで、およびフォームの開封と送信) ③どの位置で人数が急に減るかを見て、局面を特定する ④その局面に対応する打ち手を1つだけ実施する ⑤2週間程度、同じ計測点で比べる。この⑤を守れるかどうかで、改善が積み上がるか散らかるかが決まります。同時に複数を変えると、数字が動いても何が効いたか分からず、次に活かせません。加えて、表示速度のように全ページに共通する原因は、個別ページの改善ではなく共通の仕組みとして直します。画像の軽量化や読み込みの後回しは、一度整えれば以後に追加されるページにも効き続けます。個別に直すものと、共通で直すものを分けることが、手間を増やさずに効かせるコツです。

AI活用の視点では、3つの使い方が現実的です。1つ目は離脱理由の候補出しで、ページ全文を渡し「この内容を読んだ人が、判断できずに離れるとしたら何が足りないか」を挙げさせる。社内では当然と思って省いている情報が出てきます。2つ目は読みにくさの検出で、業界の外の人が読む前提で、意味が取りにくい箇所や説明なしで使われている用語を指摘させる。読み進める途中での離脱に直接効きます。3つ目は問い合わせ前後の質問の集約で、実際に届いた質問を分類し、頻出するものを洗い出す。ここで繰り返し聞かれている内容は、ページに書かれていないから聞かれている可能性が高く、比較検討中の離脱の原因そのものです。さらにARGASのような顧客追跡の仕組みを入れておくと、離脱した人が再訪したかどうか、どのページを経由して戻ってきたかまで追えます。一度離れた人がすべて失われるわけではないと分かれば、その場で引き止めることに固執せず、戻ってきたときに判断できる状態を整えるほうへ力を配分できます。ただし、どの打ち手を選ぶかは事業側の判断です。AIには原因の候補出しと点検を任せ、優先順位は自社で決めます。

Diagram

図解:離脱が起きる4つの局面と、対応する打ち手

下の図は、顧客が離れるタイミングを4つの局面に分け、それぞれで起きている原因と、局面に対応する打ち手を並べたものです。局面が違えば原因も打ち手も違うため、離脱率という一つの数字だけを見ていると、対策は当たりません。

離脱は「率」ではなく「どの局面で起きたか」で見る 右にいくほど、顧客はすでに前へ進んでいる。惜しい離脱ほど、直しやすい場所にある ① 着地直後 まだ読んでいない ② 読み進める途中 自分向けか見ている ③ 比較検討中 関心はあるが決めきれない ④ 入力の途中 すでに連絡すると決めた 離れる原因 表示が遅い、または 見出しが探し物と違う 自社向けに思えない、 専門用語が続く 料金も対応範囲も無く、 比べる材料がない 項目が多い、エラーで 最初から入力し直し その局面での打ち手 表示を軽くし、見出しを 検索語に合わせる 冒頭で誰向けかを言い、 用語に補足を添える 料金・範囲・進め方を 1か所にまとめて置く 必須項目を減らし、 エラーはその場で示す 引き止める前に、離れる理由を消す 設計の原則 ① 離脱は率ではなく局面で見る(率だけでは、打つべき手が決まらない) ② 原因を消すのが先。引き止める仕掛けは、消したあとの補助として使う ③ 表示速度など全ページ共通の原因は、個別ではなく共通の仕組みで直す ④ 一度に1か所だけ変える(同時に変えると、何が効いたか分からなくなる) よくある失敗 ・全ページの離脱率を下げようとする ── 役目を終えたページの離脱は問題ではない ・ポップアップで引き止める ── 理由は残ったまま、印象だけが悪くなることが多い

Case studies

事例で見る:国内・海外

海外

Google ── 表示速度と離脱の関係を公表し、指標として整備した

Googleが、モバイルサイトの表示速度と離脱の関係について調査結果を公表し、読み込みに時間がかかるほど離脱の確率が高まると示してきたことは広く知られています。同社はその後、表示の速さや操作への応答、表示の安定性といった体験の質を測る指標(コアウェブバイタル)を整備し、サイト運営者が自分のページを計測できるようにしました。離脱防止の観点で重要なのは、表示速度による離脱が、内容の良し悪しとは無関係に起きるという点です。どれだけ良い記事を書いても、開く前に離れられれば読まれません。しかも本人はページを見ていないので、原因は解析上「直帰」としか残らず、内容の問題と誤って解釈されがちです。中小企業がここから取れる行動は明確で、まず自社の主要ページの表示速度を測ることです。無償の計測ツールで確認でき、原因の多くは重い画像や過剰な外部タグといった、手をつけやすい箇所にあります。しかも一度整えれば以後に追加されるページにも効き続けます。なお、公表されている数値は調査条件によって異なるため、ここでは具体的な数字は扱いません。

How to use

現場での使い方:5ステップ

  1. 対象ページを1つに絞る全ページを対象にすると進まない。問い合わせにつながる可能性のあるページを選び、役目を終えて離れる完了ページや案内ページは外す。
  2. どこまで読まれたかを測れるようにする画面の4分の1・半分・最後まで、そしてフォームの開封と送信。この5点を数えられれば、離れている局面はほぼ特定できる。
  3. 人数が急に減る位置から、局面を特定する冒頭で減っていれば表示速度か見出しの不一致。途中なら内容が自社向けに見えていない。フォームで減っていれば入力の負担。
  4. その局面に対応する打ち手を、1つだけ実施する速度なら画像と外部タグの整理。内容なら冒頭に「誰向けか」を明記。入力なら必須項目の削減。同時に複数変えない。
  5. 2週間ほど、同じ計測点で比べる効いたかどうかを同じ物差しで確認し、結果を1行残す。効かなかった記録も、次に同じ手を試さずに済むという意味で価値がある。
Related terms

関連用語

Summary

まとめ:理由が消えれば、引き止めなくても顧客は残る

離脱防止設計は、顧客が離れる原因を局面ごとに特定し、離れる理由そのものを取り除く設計です。離脱率という一つの数字を眺めても、開いて2秒で戻った人と、読み切ったうえで比較に行った人は区別できません。まず対象ページを1つに絞り、どこまで読まれたかとフォームの開封・送信を測る。人数が急に減る位置から局面を特定し、その局面に対応する打ち手を1つだけ実施して、同じ物差しで確かめる。表示速度のように全ページ共通の原因は、個別ではなく共通の仕組みとして直す。原因の候補出しや読みにくさの点検はAIに任せ、どこから直すかは自社で決める。離脱の多くは拒否ではなく保留です。判断に必要な材料がその場にそろっていれば、引き止める仕掛けを使わなくても、顧客は自分の意思で残り、次の一歩に進みます。

関連サービス:Webサイト制作 — 計測点の設置から離脱局面の特定、表示速度やフォームの改善と効果確認まで支援します。
カテゴリ:Web制作

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