マーケティング用語集カテゴリ:SNS

ブランドアンバサダー

Brand Ambassadorぶらんど・あんばさだー

英語表記
Brand Ambassador
カテゴリ
SNS
難易度
★★☆(実務者向け)
関連サービス
SNS運用サポート

ブランドアンバサダーとは、自社のブランドや商品を継続的に支持し、自分の言葉で他者に薦めてくれる人のこと。企業が公式に任命する制度を指すこともありますが、成り立ちの本質は「関係が続いている顧客が、いつのまにか語り手になっている」状態です。影響力を一時的に借りるインフルエンサー起用とは違い、語りの根拠が実際の利用体験にある点が最大の違いになります。

Why it matters

信頼の出所が、企業から人に移った

かつては、企業が言うことがそのまま情報でした。パンフレットに書かれた性能、広告で語られる良さ。それを疑う手段が受け手の側にほとんどなかったからです。いまは検索すれば第三者の評価が並び、SNSを見れば実際に使った人の言葉が出てきます。この状況で、企業の自己申告は最も割り引いて聞かれる情報になりました。同じ内容でも、使っている人が言えば通り、企業が言えば通らない。ブランドアンバサダーが注目されるのは、この非対称を正面から扱う手段だからです。

広告の費用効率の問題もあります。出稿を増やせば届く範囲は買えますが、単価は上がり続け、止めた瞬間に流入は消えます。一方で、顧客が自分の言葉で語ってくれる状態は、蓄積として残ります。過去に投稿された感想は消えずに検索され続け、次の検討者の判断材料になります。買う範囲と、残る資産は別物だという整理が要ります。

そして、この領域は中小企業にとって珍しく不利ではありません。必要なのは顧客の数ではなく、関係の深さだからです。年間の取引が数十社しかない会社でも、そのうち3社が本気で薦めてくれるなら、同じ業界の検討者には十分に届きます。むしろ、顧客一人ひとりの顔と事情を把握できる規模のほうが、誰に声をかけるべきかが分かる。大企業がデータで探すしかない部分を、中小企業は最初から知っています。

Our perspective

人が他人に薦めるのは、頼まれたときではなく、薦めると自分の価値が上がるとき。

顧客心理の視点で見ると、推薦には必ず本人側の理由があります。ひとつは自己表現で、「これを選んでいる自分」を見せられること。もうひとつは他者への貢献で、「相手の役に立てた」という感覚です。逆に、報酬だけを理由に薦めてもらうと長くは続きません。本人にとってのメリットが金銭だけになった時点で、語る内容から熱が抜けるからです。さらに、薦めたあとに相手が失望すれば、損をするのは紹介した本人です。つまりアンバサダーは、自分の信用を貸してくれているのであり、商品やサポートの質が担保されていない状態でこの施策を始めるのは、その人に負債を負わせる行為になります。順番として、まず薦めても恥をかかせない品質があり、その次に制度がきます。

仕組み化の視点では、「熱心な顧客を見つけて依頼する」という属人的な動きを、四つの型に分けて回します。①候補を見つける(利用期間、継続の有無、問い合わせでの発言、SNSでの言及)②声をかける(報酬より先に、関与の機会を提示する。新商品の相談、改善への意見、開発途中の共有)③語る材料を渡す(撮影に使える素材、伝えていい範囲、避けてほしい表現をまとめた1枚)④活動を記録して返す(掲載した、反響があった、それが社内でどう役に立ったかを本人に伝える)。この④が抜けている企業がほとんどで、そのために関係が単発で終わります。一度この循環を設計すれば、担当者が依頼を思い出さなくても、語り手が増え続ける状態に近づきます。

AI活用の視点では、候補を見つける工程と素材づくりが任せられます。SNS上の自社名の言及を集めて内容別に分類する、サポート履歴や問い合わせのやり取りから満足度の高い顧客を洗い出す、渡す素材の下書きをつくる。ARGASのような追跡の仕組みと組み合わせれば、アンバサダーの投稿を見た人がその後サイトでどこまで進んだかも追えます。ただし、本人の言葉をAIに書かせるのは論外です。日本では2023年10月から、広告であることを隠した表示が景品表示法上の不当表示として規制の対象になりました。関係性の明示は守るべき最低条件であり、同時に、明示したうえで残る信頼こそが本来の狙いです。

Diagram

図解:顧客が語り手になるまでの段階

アンバサダーは、突然現れる人ではありません。知って、買って、満足して、使い続けた先に生まれます。多くの企業が抜かしているのは、右側の2段階です。

関係が続いた先に、語り手が生まれる 左から右へ、顧客の側の温度が上がっていく 知る 「そんな会社が あるんだ」 まだ他人事 買う 「一度試して みよう」 まだ不安がある 満足する 「思っていたより 良かった」 多くはここで止まる 使い続ける 「これが前提の 仕事になった」 関与の機会を渡す 人に薦める 「うちはこれで 助かっている」 アンバサダー 設計が抜けやすい区間 ここは自然には起きない。仕組みにできるかで差がつく 借りた影響力(単発の起用) 立ち上がりは速い。期間が終われば元に戻る。 語る根拠は依頼であって、体験ではない。 → 認知を買う手段として割り切って使う 育てた推奨(アンバサダー) 立ち上がりは遅い。語られた言葉は残り続ける。 語る根拠が体験なので、聞く側に通る。 → 資産として積み上がる 熱は、借りるものではなく育つもの

Case studies

事例で見る:国内・海外

海外

lululemon ── 有名人ではなく、地域で活動している人を迎える

スポーツウェアを扱うlululemonが、アンバサダー制度の代表例として語られてきました。特徴的なのは、起用する相手の選び方です。知名度の高い著名人に広く発信させるのではなく、店舗ごとに、その地域でヨガやフィットネスを教えている人をアンバサダーとして迎える形をとってきたことが知られています。日常的に商品を使い、生徒との接点を持っている人が語るため、内容が具体的になり、聞く側にとっても身近な人の話になります。ここから学べるのは、影響力の大きさより相手との距離と、語る内容の具体性が効くという考え方です。フォロワー数十万人の投稿より、教室で毎週顔を合わせる先生の一言が動かすことがある。中小企業が真似できるのはこちらの発想で、自社の商品を実際に業務で使っている顧客のなかから、同業に向けて語れる人を探すという形に置き換えられます。なお、制度の詳細や成果を示す数値は公開情報の範囲を超えるため、ここでは扱いません。

How to use

現場での使い方:5ステップ

  1. 薦めても恥をかかせない状態か確認する品質・納期・サポートに未解決の問題があるなら、制度より先にそこを直す。紹介した人の信用が減るだけの施策になる。
  2. 候補を条件で洗い出す利用期間が長い、継続している、問い合わせで前向きな発言がある、SNSで言及がある。感覚ではなく条件で並べると、意外な人が上位に来る。
  3. 報酬ではなく関与から声をかける新商品の相談、改善への意見、開発途中の共有。「自分の意見が入っている」という関与が、続く語りの根拠になる。
  4. 語る材料と、守ってほしい線を1枚にまとめる使える写真・素材、伝えていい範囲、書いてはいけないこと、関係性の明示のしかた。制約を曖昧にすると本人がリスクを負う。
  5. 反響を本人に返す掲載した、問い合わせにつながった、社内でどう役に立った。ここを返す会社だけが、二度目以降も語ってもらえる。
Related terms

関連用語

Summary

まとめ:語ってもらう前に、語れる関係をつくる

ブランドアンバサダーは、影響力のある人を探す施策ではなく、すでにいる顧客との関係を最後の段階まで設計する仕事です。人が他人に薦めるのは、頼まれたからではなく、薦めることで自分の価値が上がるとき。だからこそ、報酬より先に関与の機会を渡し、語る材料と守るべき線を明示し、反響を本人に返す。この循環を型にしておけば、担当者が思い出さなくても語り手が増えていきます。候補の洗い出しや言及の分類はAIに任せ、人は誰に何を任せるかの判断に集中する。顧客が自分の言葉で語り始めた時点で、売り込まなくても検討が進む仕組みができています。

関連サービス:SNS運用サポート — アンバサダー候補の洗い出しから、依頼の設計・素材づくり・関係性の明示ルールまでを支援します。
カテゴリ:SNS

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