UGC
User Generated Contentゆーじーしー
UGC(ユーザー生成コンテンツ)とは、企業ではなくユーザーや顧客自身が作って発信したコンテンツのこと。レビュー、SNSに投稿された写真や動画、体験談、Q&Aの回答などが含まれます。価値の源は表現の巧さではなく、企業が自分では作れない「第三者の言葉」であるという一点にあります。だからこそ、作るものではなく、生まれる条件を整えるものとして扱います。
企業が用意できないものが、判断を決めている
商品ページの写真も説明文も、企業が用意できます。予算をかければ質も上げられます。しかし、検討している人が最後に確認するのはそこではありません。実際に使った人がどう言っているか。この情報だけは、どれだけ予算があっても企業側では作れません。作れないものが判断を決めているという構造が、UGCを重要にしています。
もうひとつは、届き方の違いです。SNSのタイムラインでも検索結果でも、人は広告らしいものを避けて通ります。企業が撮ったきれいな写真は、その瞬間に「宣伝」と分類されて読み飛ばされる。一方で、顧客が自分のスマートフォンで撮った写真は、生活の続きに見えるため目に留まります。素材としての完成度が低いほうが機能する場面がある、という点は、制作物の考え方を大きく変えます。同時に、UGCは検索にも残ります。SNSの投稿やレビューは、企業が更新をやめたあとも第三者の記録として残り続け、次の検討者に読まれます。
中小企業にとっての意味は、制作コストと信頼の両方に効くという点です。撮影も原稿も外注すれば費用がかかり、更新も止まりがちになります。UGCは、顧客が使ってくれている事実さえあれば、集めて置くだけで導線の材料になります。数が少なくても構いません。同じ規模、同じ業種の顧客の声が数件あれば、検討している人はそこに自分を重ねられます。足りないのは投稿の量ではなく、集める仕組みと、置く場所の設計です。
顧客は企業のために投稿しない。自分のために投稿した結果、企業が助かる。
顧客心理の視点で見ると、投稿の動機は3つに整理できます。ひとつは自己表現で、「こういうものを選ぶ自分」を見せたい気持ち。ふたつめは貢献で、「同じことで困っている人の役に立ちたい」という感覚。みっつめは記録で、単に残したいだけ。どれも企業への好意ではありません。ここを取り違えて「投稿してください」と正面から依頼すると、応じてもらえたとしても内容が薄くなります。効くのは、本人の動機に沿った状態をつくることです。写真を撮りたくなる見た目にする、投稿しやすい短いハッシュタグを決める、「こう使うと便利」という工夫が共有したくなる余地を残す。読む側の心理も同じで、探しているのは上手な紹介ではなく、自分と近い立場の人の実際の言葉です。粗い写真に本音が書かれている投稿のほうが、整った紹介文より判断材料になります。
仕組み化の視点では、UGCを「たまたま投稿があった」で終わらせず、循環として回します。①良い体験がある ②投稿するきっかけがある ③投稿される ④許諾を取って自社の導線に置く ⑤検討中の人がそれを見て顧客になる。ここで抜けやすいのは④です。SNSで褒められて社内で喜んで終わり、という状態が非常に多い。一度、集める・許諾を取る・掲載する手順を決めてしまえば、投稿が発生するたびに資産が増えていく状態になります。手順に含めるのは、言及を検知する方法、許諾を依頼する定型文、掲載場所の決め方(料金ページの近く、フォームの直前、比較されやすいページ)、そして掲載後の効果を見る指標です。逆に、対価を渡して投稿を依頼する場合は、広告であることを明示する必要があります。日本では2023年10月から、広告であることを隠した表示が景品表示法上の不当表示として規制の対象になりました。
AI活用の視点では、集まった投稿の処理が任せられます。大量のレビューや投稿を業種・規模・課題別に分類する、繰り返し語られている不安を抽出する、長い体験談を掲載用に要約する、不適切な内容や誤った製品情報を含む投稿を検出する。ARGASのような追跡の仕組みと組み合わせれば、UGCを掲載したページを見た人がその後どう動いたかも追えるので、どの声をどこに置くべきかの判断が精度を上げていきます。ただし、投稿そのものをAIに作らせることは絶対に避けてください。UGCの価値は第三者が実際に書いたという事実だけに乗っており、生成した瞬間に価値が消えるどころか、発覚時の損失のほうが大きくなります。AIは分類・要約・検出まで、内容の出どころは常に人です。
図解:投稿が資産になるまでの循環
UGCは一度きりの出来事ではなく、回り続ける循環として設計します。多くの企業は③まででとまり、④をやらないため、せっかくの投稿が流れて消えていきます。
事例で見る:国内・海外
GoPro ── 顧客が撮った映像を、企業の発信の中心に置いた
アクションカメラを扱うGoProは、ユーザーが撮影した映像を公式チャンネルやSNSで紹介し続けてきたことで知られています。企業が制作した広告映像より、実際の利用者がスキー場や海で撮った映像のほうが、その製品で何が撮れるのかを正確に伝えます。作品の投稿を募る取り組みも継続的に行われてきました。ここで注目すべきは、UGCが「補助的な素材」ではなく発信の中心に置かれている点です。製品の性能を企業が説明する構造から、顧客の作品が性能を証明する構造へ入れ替わっています。中小企業に置き換えるなら、施工写真、導入後の現場の様子、業務の中での使い方といった顧客側の記録が、自社で撮った商品写真より説明力を持つ場面はいくらでもある、ということです。なお、成果を示す具体的な数値は公開情報の範囲を超えるため扱いません。
BtoBの中小企業 ── 顧客が書いた「運用メモ」を許諾を取って掲載する
たとえば、業務用の機器やツールを扱う中小企業の場合を考えます。BtoBでは写真映えするUGCは生まれにくい一方で、別の形の投稿が発生します。導入した会社の担当者が、社内向けに作った手順メモをブログやSNSに書く、使いこなしの工夫を同業の集まりで共有する、といった形です。こうした内容は、検討している同業の担当者にとって最も知りたい情報になります。そこで、言及を見つけたら本人に連絡し、掲載の許諾と、掲載範囲・社名の出し方を確認したうえで自社サイトに転載するという手順を決めておきます。あわせて、元の投稿へのリンクも残す。ここまでやると、企業が書いた導入事例より具体的なページができあがります。よくある失敗は、許諾を取らずにスクリーンショットを掲載してしまうことです。関係が良好だった顧客との信頼を一度で失います。これは特定企業の実績ではなく、BtoBで再現しやすい代表的な進め方です。
現場での使い方:5ステップ
- すでにある投稿を探す社名・商品名・関連する言い方でSNSと検索を一通り見る。レビュー、感謝のメール、アンケートの自由記述も含めて棚卸しする。たいてい既に何かある。
- 投稿しやすい条件を整える短く覚えやすいハッシュタグを決める、撮りやすい状態にする、納品時に一言添える。凝った企画より、手間の少なさが投稿数を決める。
- 許諾の手順を定型化する依頼の文面、掲載範囲、社名や氏名の出し方、取り下げの連絡先までテンプレートにする。毎回考えていると運用が止まる。
- 迷いが生まれる場所に置く料金ページの近く、申し込みフォームの直前、比較検討されやすいページ。専用の「お客様の声」ページに集約しても、決断直前の人には届かない。
- 対価を渡す場合は必ず明示する報酬や商品提供を伴う依頼は、広告であることを分かる形で表示する。ここを曖昧にすると、法令上の問題に加えて、UGCの唯一の価値である信頼を失う。
関連用語
まとめ:顧客の言葉を、消える前に置き場所へ運ぶ
UGCは、企業がどれだけ予算をかけても自分では作れないコンテンツです。だからこそ、作ろうとするのではなく、生まれる条件を整え、生まれたものを消える前に運ぶ設計をします。投稿しやすい状態をつくり、許諾の手順を定型化し、迷いが生まれる場所に置き、掲載後の動きを見る。この循環を回せば、顧客が自分のために投稿した結果として、検討中の人の判断材料が増え続けます。分類や要約はAIに任せ、人は事実の確認と許諾、そして明示の徹底に集中する。押して買わせるのではなく、顧客の言葉が次の顧客を連れてくる状態が、売れる仕組みの一番静かな形です。

