マーケティング用語集カテゴリ:戦略・設計

プレスリリース

Press Releaseぷれす・りりーす

英語表記
Press Release
カテゴリ
戦略・設計
難易度
★☆☆(入門)

プレスリリースとは、企業や団体が、報道関係者に向けて事実を公式に伝える文書です。読者に売り込むための宣伝文ではなく、記者が記事を書くための材料として使われることを前提にしています。だから評価される軸も「魅力的に書けているか」ではなく、誰かに伝えるに値する事実が、検証できる形で入っているかになります。

Why it matters

読者ではなく、記者に向けて書く文書

プレスリリースの原型は、20世紀初頭の米国にさかのぼります。1906年、鉄道事故に際して、PRの実務家アイビー・リーが報道機関に向けて事実をまとめた声明を配布したことが、最初のプレスリリースとされています。それまで企業は事故が起きると口を閉ざすのが通例でした。隠すのではなく、自分から検証可能な事実を出す。この転換がプレスリリースという形式を生みました。この出自は、いまも形式の細部に残っています。日付、発信元、問い合わせ先を必ず明記するのも、事実と見解を分けて書くのも、「後から検証できること」を担保するための作法です。

実務でいちばん多い失敗は、宛先を取り違えることです。プレスリリースを、顧客に読ませる広告のつもりで書いてしまう。「業界に革命を起こす」「圧倒的な使いやすさ」といった形容が並び、肝心の「何が、いつから、どこで、いくらで」が読み取れない。記者はこの文書を、記事にできるかどうかの判断材料として読みます。判断に必要な情報が冒頭になければ、それ以上は読まれません。だから構成は逆ピラミッド型——結論から書き、詳細を後に置く——が原則になります。

もうひとつ、記者が見ているのは「なぜ、いまこれを報じる価値があるのか」という一点です。新商品を出したこと自体は、その会社の内部の出来事にすぎません。それが、業界の変化・地域の課題・社会の関心と接続してはじめて、報じる理由が生まれます。自社にとっての大ニュースと、社会にとってのニュースは別物です。ここを埋めるのが、リリース冒頭に置く背景の一段落になります。

近年は、SEO目的でプレスリリースを大量配信する使い方も見られますが、これは推奨できません。Googleはリンク獲得を主目的としたプレスリリースの大量配信をリンクスパムとして扱う方針を示しており、リリース内のリンクには rel="nofollow" や rel="sponsored" を付ける運用が案内されています被リンク目当てで出したリリースは、検索評価につながらないばかりか、記者との関係を消耗させます。プレスリリースの本来の価値は、第三者に取り上げられること、そして自社サイトに一次情報として残ることにあります。

Our perspective

プレスリリースは、上手に書く文書ではない。事実だけで成立するかを試す文書。

顧客心理の視点で見ると、プレスリリースには読み手が二人います。一人目は記者、二人目はその記事を読む見込み客です。この二人は求めるものが違います。記者が求めるのは「報じる理由」と「裏が取れること」。見込み客が求めるのは「自分に関係があるか」です。多くのリリースは、どちらにも向いていない中間の文章になっています。順番を決めてください。まず記者に通ることを優先し、そのうえで見込み客が読んでも意味が分かる形にする。この順にすると、結果として飾りが落ち、事実が前に出ます。そして興味深いことに、飾りを落とした文章のほうが、見込み客にも信用されます。人は、抑えた言い方で具体的な数字が書かれている文章に、誠実さを感じるからです。「業界初」と書くなら、何をもって初なのか、いつ時点の何を調べた結果なのかまで書く。書けないなら、その表現は落とします。

仕組み化の視点では、プレスリリースを単発の発表で終わらせないことが要点です。1本のリリースは、最低4つの資産に展開できます。①自社サイトのニュース記事として恒久的に残す(検索で見つかる一次情報になる)。②営業資料の1ページに転載する。③SNS投稿に分解する。④採用ページの実績欄に加える。この展開ルートをテンプレート化しておけば、リリースを1本書くたびに、人が判断しなくても4か所が更新される状態になります。さらに、出す前の段階も型にできます。ネタの棚卸し、背景の一段落、事実の裏取りチェック、配信先リストの選定。この4工程をチェックリストにすると、担当者が代わっても品質が落ちません。PR全体の中で、プレスリリースは最も型にしやすい部分です。

AI活用の視点では、下書きと点検の両方に使えます。事実のメモを渡して逆ピラミッド型の構成に整えさせる、想定される質問を先に洗い出させる、業界メディアごとに切り口を変えた見出し案を複数作らせる。いずれも人が一から考えるより速く進みます。特に効くのが「記者の立場で読んで、報じる理由が伝わるか判定させる」使い方です。書いた本人には自明でも、外から見ると理由が抜けていることは頻繁にあります。配信後は、ARGASのように行動を追跡できる仕組みと組み合わせることで、掲載記事から流入した相手がその後どのページを見て、問い合わせに至ったかまで追えます。ただし、AIに事実や数字を補完させないでください。もっともらしい数値が入り込み、そのまま外部に出ると、訂正では回復できない損害になります。AIに任せるのは構成・表現・点検まで。数字と固有名詞は、必ず人が一次資料と突き合わせてください。

Diagram

図解:記者が読む順番と、1本を4つに広げる展開

上段は記者が判断する順番。最初の数行で落ちれば、以降は読まれません。下段は、1本のリリースを資産に変える展開ルートです。

記者は、上から順に落としながら読む 最初の段で通らなければ、それより下は存在しないのと同じ ① 見出しと最初の3行 ── いま報じる理由があるか 自社にとっての大ニュースではなく、読者にとっての意味が書かれているか ② 基本情報 ── 何が・いつから・どこで・誰に・いくらで 形容詞を全部消しても、この5点だけで意味が通るか ③ 裏が取れるか ── 数字・固有名詞・出典 「業界初」なら、何をもって初か。いつ時点の何を調べたか ④ 使える素材があるか ── 写真・図・担当者コメント 素材が揃っているほど、記事にする手間が下がる 通った分だけ下へ 宣伝文(記事にならない) 主語が自社。形容が多く、事実が後ろにある。 「革命的」「圧倒的」──検証できない語。 読み手に売り込もうとしている プレスリリース(記事の材料になる) 事実が先、背景が後。出典と問い合わせ先を明記。 数字は時点と範囲つきで書く。 記者が判断できるように書かれている 1本を4つの資産に展開する(出したら終わり、にしない) プレスリリース1本 自社サイトの一次情報 検索で見つかる形で残す 営業資料 商談で示す最新の実績に SNS投稿 要点に分解して複数回 採用ページ 動きのある会社に見える 検索目的の大量配信はリンクスパムとして扱われる。リリースの価値は、取り上げられることと一次情報が残ること。

Case studies

事例で見る:国内・海外

海外

アイビー・リーと最初のプレスリリース(1906年) ── 隠さずに出す、という発明

プレスリリースという形式の起点は、1906年、米国で鉄道事故が発生した際に、PRの実務家アイビー・リーが報道機関へ向けて事実をまとめた声明を配布したことにあるとされています。当時の企業の常識は、不都合な出来事については何も語らないことでした。リーが行ったのはその逆で、自分たちの側から、確認できる事実を先に開示したのです。この判断の背景にあったのは、隠せば憶測が広がり、憶測は事実より悪い形で定着する、という読みでした。ここから読み取れるのは、プレスリリースがもともと「良い話を広める道具」ではなく「事実を正確に流通させる装置」として生まれたということです。この出自は現在の形式にも残っています。発信日、発信主体、問い合わせ先の明記。事実と見解の書き分け。数字への時点と範囲の付記。いずれも、後から誰でも検証できるようにするための作法です。裏を返せば、検証できない形容を並べた文書は、形式だけプレスリリースの体裁をとった別のものだということになります。この観点は、平時の発表だけでなくクライシスマネジメントの場面でそのまま生きます。

How to use

現場での使い方:5ステップ

  1. 「なぜ、いま、社外の人に関係があるのか」を1行で書くここが書けない材料は、まだリリースにしない。自社にとっての大ニュースと、報じる価値のあるニュースは別物。
  2. 逆ピラミッド型で組む見出し、リード(何が・いつから・どこで・誰に・いくらで)、背景、詳細、会社概要、問い合わせ先の順。結論を最後に置かない。
  3. 形容詞を全部消して読み返す「革命的」「圧倒的」を消しても意味が通るか確認する。通らないなら、事実が足りていない合図。
  4. 素材を揃えてから出す写真、図、担当者コメント、参考データ。記事にする手間を下げるほど、取り上げられる確率は上がる。
  5. 出した後、4か所に展開する自社サイトの一次情報、営業資料、SNS、採用ページ。配信して終わりにせず、社内資産として残す。
Related terms

関連用語

Summary

まとめ:飾りを落とすほど、届きやすくなる

プレスリリースは、報道関係者に向けて事実を公式に伝える文書です。1906年に鉄道事故の際、隠すのではなく検証できる事実を自ら出す、という判断から生まれたとされ、その出自がいまも形式に残っています。実務で押さえるべきは3点です。第一に、宛先は記者であること。読者に売り込む宣伝文とは目的が違います。第二に、報じる理由を冒頭に置くこと。新商品を出したこと自体は社内の出来事にすぎず、業界や地域の文脈につながってはじめて記事になります。第三に、出した後に展開すること。自社サイトの一次情報、営業資料、SNS、採用ページの4か所に広げれば、1本のリリースが継続的に働きます。検索評価を狙った大量配信は逆効果です。AIには構成と点検を任せ、数字と固有名詞は人が確認する。飾りを落として事実だけを残した文書ほど、記者にも見込み客にも信用され、こちらから売り込まなくても問い合わせが生まれる状態に近づきます。

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カテゴリ:戦略・設計

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