マーケティング用語集カテゴリ:SNS

ソーシャルコマース

Social Commerceそーしゃる・こまーす

英語表記
Social Commerce
カテゴリ
SNS
難易度
★★☆(実務者向け)
関連サービス
SNS運用サポート

ソーシャルコマースとは、SNSアプリの中で、商品の発見から検討・購入までが完結する販売の形のこと。投稿を見て気になった人を外部のECサイトへ送るのではなく、コメント・DM・アプリ内のショップ機能や決済まで、SNSの機能そのものを購買の導線として使います。「SNSで集客してサイトで売る」の一段先にある考え方で、変わるのは売り場ではなく、顧客に何回の行動をお願いするかです。

Why it matters

買わない理由の多くは、興味の消滅ではなく移動の面倒さ

SNSで商品を見つけた人が買うまでに、従来はいくつもの移動が挟まっていました。投稿を見る、プロフィールを開く、リンクを踏む、外部サイトが読み込まれるのを待つ、商品を探し直す、カートに入れる、会員登録して住所と支払い方法を入力する。ひとつひとつは数秒の作業です。しかし、そもそもその人は買い物をしに来ていたわけではありません。移動を一回お願いするたびに、一定の割合が戻ってこないという前提で考える必要があります。興味が消えたのではなく、興味が続くだけの理由が、面倒さに勝てなかっただけです。

ソーシャルコマースは、この移動の回数そのものを削ります。アプリの中に商品情報があり、支払い情報も配送先も既に登録済みで、決済がその場で終わる。すると「あとで見よう」と思う瞬間が発生しません。人は買い物のときに検討を重ねる存在だと考えられがちですが、単価が高くない商品では、迷う時間を与えないほうが満足度も返品率も安定することがあります。検討が長いほど不安を集める時間も長くなるためです。

もうひとつの違いは、売り場に他人の声が同居していることです。ECサイトの商品ページに並ぶのは、企業が用意した写真とレビューだけ。SNSの投稿には、コメント欄に実際の質問と回答が積み上がり、購入者の投稿がタグでつながっています。判断に必要な材料が、売り込みとは別の場所から供給される構造になっている。中小企業にとっては、ここが特に効きます。知名度で劣っていても、コメント欄でのやりとりの丁寧さは、その場で見える差になるからです。大手ほど個別対応ができない領域が、そのまま勝ち筋になります。

Our perspective

売り場をSNSに移すのではなく、購買に必要な行動の回数を減らす。

顧客心理の視点で見ると、SNSを開いている人は「買い物モード」に入っていません。探しに来た人ではなく、流れてきたものを眺めている人です。この状態の人に対して、検索して比較して決めるという能動的な行動を求めると、たいてい途中で日常に戻っていきます。ソーシャルコマースが機能するのは、受け身のまま最後まで進める設計になっているときです。だから投稿の役割は説得ではありません。「これは自分向けだ」と感じてもらうところまでで十分で、そこから先は行動の摩擦を消す仕事になります。ここを取り違えて、投稿にスペックと価格と特典を詰め込むと、広告の顔になった瞬間にスクロールされます。効くのは、使っている場面が具体的に想像できることと、疑問がその場で解けることの二つです。

仕組み化の視点では、ソーシャルコマースは「投稿を頑張る」話ではなく、5つの部品を組み合わせる話になります。①見つけてもらう投稿、②その場で読める商品情報、③コメント・DMでの即答、④アプリ内で完結する購入、⑤購入後に次の投稿が生まれる仕掛け。中小企業がつまずくのはほぼ③です。反応があった瞬間に返せる体制がないと、せっかく温まった人が冷めます。ここは根性ではなく設計で解きます。よくある質問の返答をあらかじめ定型化し、在庫と価格の情報を一箇所で管理し、対応時間を明示しておく。この3つを決めるだけで、担当者が一人でも回るようになります。あわせて、SNSの中で売る場合も通信販売であることに変わりはありません。事業者名・所在地・連絡先・返品や解約の条件といった、特定商取引法で求められる表示が必要になります。投稿に全部書けないぶん、どこに置いてどう辿らせるかを最初に決めておきます。

AI活用の視点では、③と⑤が任せどころです。寄せられる質問はかなりの割合で似通うため、蓄積された過去の質問と回答をもとにAIが下書きを作り、人が確認して送る形にすると、応答までの時間が大きく縮みます。コメントの中から購入意欲の高いものと単なる感想を分けて優先順位をつける、投稿ごとの反応を分類して次に作るべき内容を提案する、といった処理もAIが得意です。ARGASのような追跡の仕組みと組み合わせれば、SNS経由で来た人がどの投稿から入り、どこで購入に至ったかが残るので、感覚ではなく記録で次の投稿を決められます。ただし、購入直前の不安に答える一言だけは人が書くほうが通ります。ここは効率化の対象ではなく、投資する場所です。

Diagram

図解:外部サイトへ送るか、その場で終わらせるか

同じ人数が投稿を見ても、最後に残る人数は導線の長さで決まります。ソーシャルコマースがやっているのは説得力の強化ではなく、途中の関門を外すことです。

離れていくのは、興味が消えたからではない 従来:SNSで見つけて、外部サイトへ送る 投稿を見る プロフのURL サイト到達 住所・決済の入力 購入 関門が増えるほど、そのつど一定の割合が戻ってこない ソーシャルコマース:アプリの中で終わらせる 投稿で見つける その場で商品情報とコメント アプリ内で購入 移動が起きないので「あとで見よう」が発生しない 同じ人数が投稿を見ても、最後に残る人数が変わる 変えたのは商品でも価格でもなく、お願いする行動の回数だけ 従来 SNS内完結 この差が売上 説得を足すより、関門を外すほうが速い

Case studies

事例で見る:国内・海外

海外

中国 ── SNSが「販売チャネルそのもの」になった市場

中国では、SNSとECの境界が早い段階から消えました。淘宝直播(タオバオライブ)、抖音(Douyin)、小紅書(RED)といったサービスでは、コンテンツを見ることと商品を買うことが同じアプリの中で連続しており、ユーザーは「買い物サイトへ移動する」という動作をほとんど経験しません。日本から見ると特殊な市場に映りますが、起きていることは単純で、発見と購入のあいだにあった距離が消えただけです。米国でもTikTok Shopが2023年に本格展開し、日本でも2025年に提供が始まるなど、同じ方向の動きが各国で進んでいます。中小企業が学ぶべきは規模ではなく順序です。売れる商品を作ってからSNSで告知するのではなく、SNS上での反応を見ながら商品と見せ方を決めていくという進め方が、この形では自然になります。なお、各社の売上規模や比率については公開情報の解釈が分かれるため、ここでは数値を扱いません。

How to use

現場での使い方:5ステップ

  1. いまの導線で「お願いしている行動」を数える投稿を見てから注文が完了するまで、顧客が何回タップし、何回入力しているかを実際に自分でやってみる。数えると、削れる関門がだいたい2つは見つかる。
  2. SNS内で完結できる商品を1つ選ぶ全商品を移す必要はない。単価が高すぎず、説明が短く済み、リピートが見込めるものから始める。ここで選択を誤ると、検討が必要な商品を勢いで買わせる形になり、返品と不満が増える。
  3. 表示義務と問い合わせ先を先に整える事業者名・所在地・連絡先・返品や解約の条件など、通信販売として必要な表示をどこに置き、投稿からどう辿らせるかを決める。後回しにすると、伸び始めてから止めることになる。
  4. 質問への回答を定型化し、返す時間を決めるよくある質問の回答文を用意し、対応する時間帯を明示する。即答が難しくても「今日中に返します」が守られていれば温度は保てる。ここが最も売上に効き、最も手を抜かれている。
  5. 購入後に投稿が生まれる一言を入れる同梱物や購入完了メッセージで、写真や感想の共有を軽く促す。生まれた投稿が次の発見をつくり、外部の広告費に頼らない循環になる。対価を渡して依頼する場合は、広告であることの明示が必要になる。
Related terms

関連用語

まとめ

まとめ:買う気を強めるより、買えない理由を消す

ソーシャルコマースは、新しい売り場を増やす施策ではありません。顧客にお願いしている行動の回数を数え、消せるものを消していく作業です。SNSを開いている人は買い物をしに来ていない。その前提に立てば、やるべきことは訴求を強めることではなく、受け身のまま最後まで進める道をつくることだと分かります。見つけてもらう投稿、その場で読める情報、すぐ返ってくる回答、アプリ内で終わる購入、そして次の投稿が生まれる仕掛け。この5つを一度組み立ててしまえば、担当者が張り付いていなくても注文が入る状態に近づきます。回答の下書きや反応の分類はAIに任せ、人は購入直前の不安に答える一言に集中する。顧客が自然に買いたくなる仕組みは、熱意ではなく、摩擦の少なさとして現れます。

関連サービス:SNS運用サポート — 投稿設計からアプリ内導線の整備、コメント対応の定型化、購入後の循環づくりまでを支援します。
カテゴリ:SNS

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