マーケティング用語集カテゴリ:SNS

クリエイターエコノミー

Creator Economyくりえいたーえこのみー

英語表記
Creator Economy
カテゴリ
SNS
難易度
★★☆(実務)
関連サービス
SNS運用サポート

クリエイターエコノミーとは、個人の発信者が、自分で作ったコンテンツとファンとの関係を土台に、直接収益を得る経済圏を指します。動画、文章、音声、イラスト、実演。形式は問いません。決定的に変わったのは、テレビ局や出版社のような発表の場を持つ組織を通さなくても、個人が受け手に直接届き、直接お金を受け取れるようになった点です。企業にとっては、この経済圏をどう使うかではなく、すでに顧客がこの経済圏の中で情報を得ているという前提から考える話になります。

Why it matters

発表の場を握る側が、組織から個人に移った

かつて、多くの人に何かを届けるには、届ける手段を持つ組織を通す必要がありました。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌。作り手がどれだけ優れていても、そこに載せてもらえなければ受け手には届きません。判断するのは組織の側です。この構造が変わったのは、誰でも投稿でき、誰でも見られるプラットフォームが普及したことによります。載せる/載せないの判断を組織が独占しなくなり、受け手が直接選ぶようになったのが第一段階です。

ただし、この段階では発信者はまだ収益を得られていません。次に起きたのが、収益を発信者に分配する仕組みの整備です。動画に付いた広告の収益を投稿者と分け合う仕組みが登場し、発信を続けることが職業として成立するようになりました。ここから、専業の発信者が生まれます。さらに第三段階として、広告に依存しない直接的な収益手段が広がりました。月額のメンバーシップ、配信中の投げ銭、デジタル商品の販売、有料のニュースレター、そして自分の商品を売る形。ファンが企業を経由せずに発信者へ直接支払う経路が用意されたことで、「多くの人に薄く届く」ことよりも「少数の人と深くつながる」ことのほうが収益として成立しやすい局面が生まれました。サブスクリプションモデルが個人単位で機能するようになった、と言い換えることもできます。

この経済圏には、構造的な弱点があります。収益のほとんどがプラットフォームの上に載っていることです。表示のアルゴリズムが変われば届く人数が変わり、規約が変われば収益条件が変わり、サービス自体が終了すればフォロワーごと消えます。実際、かつて広く使われた短尺動画サービスが終了し、そこに集まっていた発信者が別の場所へ移らざるを得なかった例があります。積み上げた数字が、自分の意思と無関係に失われる。だからこそ現在の発信者の間では、メールアドレスや自分のサイトなど、プラットフォームの外に接点を持つことが繰り返し推奨されています。これは企業のマーケティングにもそのまま当てはまる論点です。

では、中小企業にとって何を意味するのか。三つの見方があります。一つめは、起用する相手としての発信者です。広告枠を買う代わりに、すでに信頼を持っている個人に伝えてもらう。インフルエンサーマーケティングの領域です。二つめは、自社の中の人が発信者になることです。社長、職人、技術者。専門性を持つ人が発信すれば、それ自体が信頼の土台になります。三つめは、顧客が発信者になることです。買った人が自発的に語る状態は、企業がいくら費用をかけても作れない種類の説得力を持ちます。この三つはどれか一つを選ぶものではなく、同時に成立します

Our perspective

人は組織を信じるより先に、人を信じる。企業が持てない信頼を、個人は最初から持っている。

顧客心理の視点で見ると、この経済圏が成立している理由は単純です。人は、法人格よりも人間を信じるようにできているからです。企業アカウントの投稿は「会社としての発言」として読まれ、都合の良い部分が選ばれているという前提が働きます。一方、個人の発信は「その人が責任を負っている言葉」として読まれます。失敗も好みも生活も見えているぶん、良いと言ったことの重みが違う。もう一つ働いているのが継続の効果です。人は、繰り返し見ている相手に対して自然と親しみを持ちます。毎週その人の投稿を見ている状態は、会ったことがなくても知っている人に近い感覚を生みます。この感覚があるところに商品が紹介されると、広告ではなく助言として受け取られます。企業がここから学ぶべきことは、売り手として正しい情報を出すことと、人として信じられることは別の作業だという点です。中小企業の場合、この経済圏に参加する最短経路は外部の発信者への依頼ではなく、自社の中にいる専門性を持つ人が顔を出して話しはじめることであることが少なくありません。

仕組み化の視点では、三つの入り口を並行して設計します。①外の発信者に頼む ── フォロワー数ではなく、話している領域が自社と重なる人を選びます。予算を一人に集中させず、マイクロインフルエンサーを複数人、同じ条件で試して合う相手を見つける。対価を伴う依頼は広告にあたるため、PR表記の明示が必要です。②中の人が発信する ── これが最も資産になりますが、最も続きません。個人の意欲に任せると必ず止まるため、素材の集め方、収録の頻度、編集の担当を業務として組み込みます。加えて、担当者が退職した場合にどうするかを最初に決めておく必要があります。個人に紐づいたアカウントは、その人が辞めたときに消えます。③顧客が発信する ── 語りたくなる出来事を用意し、生まれた投稿を許諾のうえで自社の素材として使います。UGCの活用であり、続いた相手はブランドアンバサダーのような長い関係へ移します。三つに共通する原則が一つあります。関係をプラットフォームの上に置いたままにしないことです。そこで生まれた関心は、自社サイト、メール、来店といった自分で管理できる接点へ引き取る。プラットフォームは出会う場所であって、関係を保管する場所ではありません。

AI活用の視点では、この経済圏そのものが構造変化の途中にあります。生成AIによって制作の負担が大きく下がったため、発信の総量は増えます。文章も画像も動画も、以前より短時間で形になる。結果として何が起きるかというと、作れること自体の価値が下がり、誰が言っているかの価値が上がります。同じ品質のものが大量にあるとき、選ばれる理由は品質ではなく関係になるからです。この見立てに立つと、企業側の打ち手も定まります。制作の効率化にAIを使いつつ、差がつく部分──実際の現場、実名の担当者、実在の顧客の言葉──には人の時間を残す。実務では、候補となる発信者の過去投稿を読み込ませて自社との重なりを整理させる、集まった顧客投稿を分類して使われ方の傾向を把握する、一本の素材を媒体ごとに書き分ける、といった作業がAIに任せられます。ARGASのような追跡の仕組みを合わせれば、どの発信者・どの投稿から来た人が問い合わせに至ったかが残り、フォロワー数ではなく事業への寄与で判断できるようになります。

Diagram

図解:誰と誰がつながっていて、どこが弱点か

クリエイターを中心に、ファン・プラットフォーム・企業が結びついた経済圏です。収益手段は複数ありますが、その多くがプラットフォームの上に載っている点が構造的な弱点になります。

個人が、組織を通さずに受け手とつながり、直接お金を受け取る 企業(スポンサー) タイアップ・依頼 クリエイター 個人の発信者 ファン 見る人・買う人 時間・支援・購入 作品・人柄・継続 プラットフォーム 配信基盤・分配 コンテンツ 到達・収益分配 収益の柱:広告分配/月額メンバーシップ/投げ銭/デジタル商品/有料ニュースレター/タイアップ/アフィリエイト/物販・ライブ販売 差:この収入の多くはプラットフォームの上に載っている。規約とアルゴリズムが変われば消える。 だから「ファンと直接つながる手段(メール・自社サイト)を持てているか」が、続くかどうかを分ける。 中小企業から見た入り口は三つ。どれか一つを選ぶものではない ① 外の発信者に頼む フォロワー数ではなく、話す領域が 自社と重なる人を複数人、同条件で試す 対価を伴う依頼は広告。PR表記が要る ② 中の人が発信する 社長・職人・技術者。専門性そのものが 信頼になる。最も資産になり、最も続かない 意欲でなく業務として組み込む ③ 顧客が発信する 語りたくなる出来事を用意し、生まれた 投稿を許諾のうえで素材として使う 続いた相手は長い関係へ移す 共通の原則:生まれた関係は、自社サイト・メール・来店など自分で管理できる場所へ引き取る。 出会う場所と、関係を置く場所は別でいい

Case studies

事例で見る:国内・海外

海外

広告分配から直接課金へ ── そして「借り物の土地」という認識

海外での広がりは、段階を追って進みました。最初に大きかったのが、動画プラットフォームによる広告収益の分配です。投稿に付いた広告の収益を投稿者と分け合う仕組みが整ったことで、発信を続けること自体が職業として成立するようになりました。次に登場したのが、ファンが発信者に直接支払う仕組みです。月額で継続的に支援する形、配信中にその場で送る形、デジタル商品を買う形、有料の記事やニュースレターを購読する形。プラットフォーム側も、メンバーシップ機能や投げ銭機能、クリエイター向けの販売機能を相次いで整備しました。広告主を経由せず、受け手から発信者へ直接お金が流れる経路が標準装備になったのがこの段階です。

同時に、発信者の間で共有されるようになった認識があります。プラットフォームの上に築いたものは自分の資産ではない、という理解です。表示のアルゴリズムが変われば同じ内容でも届く人数が変わり、規約や収益条件の変更は一方的に行われます。サービスそのものが終了することもあります。実際、かつて広く使われた短尺動画サービスが終了した際、そこに大きなフォロワーを持っていた発信者は、別の場所で作り直すことを余儀なくされました。この経験から、メールアドレスの取得や自分のサイトの保有が繰り返し推奨されるようになります。近年はさらに生成AIの普及によって制作の負担が下がり、発信の総量が増えました。供給が増えれば、作れること自体の希少性は下がります。何が残るかというと、その人と受け手のあいだにある関係のほうです。なお、この経済圏の規模や参加人数については各所から推計が公表されていますが、定義の取り方によって数値が大きく異なるため、ここでは具体的な数字には触れません。

How to use

現場での使い方:5ステップ

  1. 顧客がどの発信者から情報を得ているかを調べる市場規模の話から入らない。自社の顧客層が普段どのプラットフォームで、誰の発信を見ているかを具体的に洗い出す。ここが分からないまま施策を決めると、届く場所を外す。
  2. 社内に語れる人がいないかを先に確認する職人、技術者、経営者。専門性を持つ人の発信は、外部の誰よりも正確で替えが利かない。外部への依頼を検討するのは、社内に適任がいない場合か、届く範囲を広げたい場合に限る。
  3. 発信を意欲ではなく業務として組み込む収録の頻度、撮影と編集の担当、投稿の枠を決める。本人の負担を「話す」だけに切り分ける。文字起こしと媒体ごとの書き分けはAIに任せる。アカウントは会社の管理下に置き、担当交代時の扱いを先に決めておく。
  4. 外部に頼むときは複数人を同条件で試すフォロワー数ではなく、話している領域が自社と重なるかで選ぶ。予算を一人に集中させず、条件を揃えて比べられる形にする。対価を伴う依頼は広告にあたるため、PR表記の明示が必要になる。
  5. 関心を自社側の接点へ引き取るプラットフォームは出会う場所であって、関係を保管する場所ではない。資料請求、メール登録、来店予約といった経路を必ず用意し、どの発信から来た人が問い合わせに至ったかを計測できる形にしておく。
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関連用語

まとめ

まとめ:信じられているのは、会社ではなく人のほう

クリエイターエコノミーとは、個人の発信者が自らのコンテンツとファンとの関係を土台に直接収益を得る経済圏です。広告収益の分配で職業として成立し、月額メンバーシップや投げ銭、デジタル商品の販売といった直接課金の手段が加わったことで、多くの人に薄く届くより少数と深くつながるほうが成立しやすくなりました。ただし構造的な弱点があります。収益の多くがプラットフォームの上に載っているため、アルゴリズムや規約が変われば失われる。だから発信者の側では、メールや自分のサイトなど外に接点を持つことが常識になっています。企業から見た入り口は三つです。外の発信者に頼む、中の人が発信する、顧客が発信する。中小企業の場合、外に探す前に社内の専門家を出すほうが確実なことが多く、続けるためには意欲ではなく業務として組み込む必要があります。生成AIで制作の負担が下がり供給が増えるほど、作れること自体の価値は下がり、誰が言っているかの価値が上がります。出会う場所はプラットフォームでよく、関係は自社側に置く。この分け方ができている状態が、顧客が自分の意思で選び続ける仕組みになります。

関連サービス:SNS運用サポート — 社内の発信者を立ち上げる体制づくりから、外部クリエイターの選定と依頼条件の設計、顧客投稿の活用、自社側への導線設計と計測までを支援します。
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